今回は「子育て生活応援事業」とマイナンバーカードの話です。この事業では給付金をマイナポイントで支給することになっています。
念のために、今回の「子育て生活応援事業」はマイナンバーカードの交付率アップを目的にしているわけではないようです。
で、わたし的結論を先に。
「子育て支援」と「マイナンバーカード」を絡めるべきではなかった
です。それでは順を追って。
1.敦賀市とマイナンバーカード
ここで、マイナンバーカードに関して背景を見てみると、
・背景①:敦賀市のマイナンバーカード交付率は37.1%で県内市町で最低(令和4年5月1日現在)。9月13日の新聞記事によると最新では敦賀市の交付率は40.8%で依然、最下位。
→一番最後に参考で県内自治体の一覧表を載せています。
・背景②:総務省は、来年度(令和5年度)の地方交付税算定にカードの交付率を反映させる意向を示した。
・背景③:総務省はマイナンバーカードの普及が遅れている自治体を「重点的フォローアップ対象団体」に指定して名指しで対策強化を要請する(都道府県から市町村を指導する)方針を示した。
つまり、マイナンバーカードの普及ということでは、敦賀市の成績は悪くて、来年度以降にいろいろと影響があるかもしれない、ということです。国からのお金が減ったり、県に怒られたり。
なので、敦賀市はマイナンバーカードの交付率を上げなくてはいけない状況です。
2.「子育て生活応援事業」とマイナンバーカード
だから、今回はマイナポイント120万円分もあることだし、マイナンバーカードを作ってくれるといいですね!という話なんですが・・・確認してみましょう。
事業期間を3年4カ月で計算するとややこしいので、ざっくり3年、この事業を実施したとしましょう。
大体1年間の敦賀市の出生数が500人だとして、最初は1,500人の子どもが給付対象になり、全員が作ったとしてマイナンバーカードは1,500枚交付されます。この新規の1,500枚は交付率を2.3%引き上げます。もし両親ともに未加入だとすると最大で新規4,500枚交付され、交付率を6.9%引き上げます。
2年目以降は新生児500人分のカードが発行されたとして、交付率を0.77%引き上げます。両親とも新規に作ったとするとさらに1000枚追加で、最大1,500枚、交付率を2.3%引き上げます。3年目も同じ。
ということは3年間で
6.9% + 2.3% + 2.3% = 11.5%
最大11.5%くらいカード交付率を引き上げます。これで敦賀市のマイナンバーカード交付率は50%を超えますね。
(注)でも市は対象者の2/3しかカードを申請しない前提で予算を組んでいるようです。議会では全員を対象にするよう変更するという話も出てきましたが、そうすると24億円÷2/3=36億円かかるということ?
3.マイナンバーカードの交付率を上げるには?
実は、マイナンバーカード交付率を上げるのに必要なのは、「高齢者にカードを作ってもらうこと」です。
今まで、マイナポイントが最大2万円のマイナポイントを付けるのにも関わらず、全国的に交付率が伸びませんでした。
なぜでしょう?
それは主に高齢者がカードを作らなかったからだと言われています。マイナポイントを付与されてもキャッシュレスで買い物をする習慣がない人には、「面倒くさい」が勝ってしまって、マイナポイントはカードをつくる動機づけにならなかったのです。
こういう状況にうまく手を打ったのが、福井県池田町です。池田町は、18%(令和3年)から72%(令和4年)に大幅に交付率を上げました。なんと54%増です。最新情報では75.3%。
池田町は何をしたのか?
池田町は、「年内にカードを申請または取得した町民に1人5千円分の地域商品券「いけだ応援券」を配布します」とやったのです。
これで、池田町の交付枚数が一気に増えました。2万円のマイナポイントではなかなかカードを作らなかった人たちが、5千円の商品券でカードを作ったのです。その増加数は人口の約半分!
池田町内で使う商品券なので池田町の地域経済の活性化にもなったと思います。
また、先日、坂井市もマイナンバーカードを作った人に3,000円分の地域商品券を配布する事業を発表しました。
でも、こういうことをすると、対象人数も多いし、莫大な予算が必要になりそうですよね?
敦賀市でこの事業をやったら予算はいくらになるでしょうか?
今現在、敦賀市でマイナンバーカードを作っていない人は約4万人なので、
ひとり5,000円の地域商品券ならば約2億円、
ひとり3,000円の地域商品券ならば約1億2千万円、
の支出になります。そして、地域商品券ですから、敦賀市の地域経済に大きく貢献します。
マイナンバーカードの交付率を上げるという観点では、「子育て生活応援事業」でも10%ほどの交付率アップを見込めるかもしれませんが、支出は3年間で約24億円です。
またマイナポイントは全国どこでも使えるので、24億円がすべて敦賀市内の経済にまわるわけではありません。
敦賀市で地域商品券でカード交付促進の事業をやったとして、交付率がどれだけ上がるかは分かりませんが、池田町のように上手にやれば、2億円で大きな交付率アップが望めるはずです。2億円は全て敦賀の地域経済にまわります。
4.現金の口座振込はできなかったのか(マイナポイントではなくて)
では、なぜ今回マイナポイントの給付にしたかというと、その理由は議会で答弁されていて、「紙の申請だと新たなシステム開発が必要」、「申請書の提出、口座登録で数カ月必要」、「現金では所得とみなされて、児童扶養手当をもらっている家庭では手当の金額が減る」ということです。
本当に無理なのでしょうか?
私は「現金の口座振込はできた」と思っています。
現金振込にするならば、口座登録は児童手当と同じ口座を使えばいいし、新生児だったら児童手当の申請書と同時に申請できます。
「新たなシステム開発が必要で数カ月かかる」という話ですが、新規の現金振込を15日間でやった実績が敦賀市には有ります。
令和2年の「子育て世帯応援手当支給費」です。
この事業では0歳~18歳の子ども1人に2万円の現金を口座振込で支給しましたが、5月16日に決まって6月1日から支給しています。15日間でできたのです。
だから、今回の「子育て生活応援事業」でも、12月から現金で口座振込することは十分可能だったはず。この9月議会で10月6日採決で12月1日支給なら50日以上ありますから。
ただ、「現金では所得とみなされて、児童扶養手当をもらっている家庭では手当の金額が減る」は確かにどうしようもない。昨年度から、地方自治体の子育て支援には非課税所得になる措置もできたのですが、今回の「子育て生活応援事業」のようなまともに現金をお渡しするのは非課税措置の対象にならないんですね。
とにかく児童扶養手当の所得区分に影響が出るほど、今回の事業は金額が大きいんですよ。これに影響が出ないようにして、どうしても現金的なものを給付するならポイントしかないですね。
(令和2年の「子育て世帯応援手当支給費」の時も金額は2万円でも同じことが起きるケースがあり得たけど、どうしたんだろう?この時は何か措置をしたけど、今回は金額が大きいのでできない、とか有るんだろうか?)
5.今回のまとめ
前回も見たように、マイナンバーカードが絡んだ瞬間、「公平性」の問題が出てきます。また、カード交付率を上げる効果は限定的です。ということで、まとめると、
・「子育て支援」と「マイナンバーカード」を絡めるべきではなかったと思います。
・念のためにもう一度書くと、私は、マイナポイントであろうが、現金振込であろうが、今回の「子育て生活応援事業」は良い政策だとは思っていません。
・そしてマイナンバーカードの普及には賛成です。マイナポイントや商品券のような特典が無くてもマイナンバーカードは作った方がいいと思っています。メリットが分からないという人もいますが、普及率が上がってこそ出てくるメリットも有ります。来年度以降、自治体マイナポイントでwin-win的ないろんな政策が打てる可能性があります。いずれスマホの中にカードが入ってしまうかもしれませんが、今はまだカードが普及することの個人的メリットも社会的メリットも大きいと思っています。
今回は以上です。
次回は「子育て生活応援事業」について、もろもろ思ったことを雑記的に書いてみようと思います。
では。
(つづく)
【追記】上に書いたように、マイナポイントでもなく現金でもなく、地域商品券で給付しては、という話があるかもしれません。非課税だろうし。しかし、0歳児で年間60万円を敦賀市内だけで消費するのは現実的ではないかもしれません。今回の給付はそれほど大きな額だということです。
【参考】県内市町のマイナンバーカード交付数と交付率
敦賀市は最下位(R3/2/1)→最下位(R4/5/1)→最下位(R4/8/末)。どうしてなんでなんだろう・・・?
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