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本質論 子育て生活応援事業についての議論

 市議会の予算決算常任委員会で「子育て生活応援事業」が削除されたんですね。本会議でも同じ議決になるだろうから「子育て生活応援事業」は少なくとも12月からの実施はなくなる可能性が高くなりました。

 ただ、いろんな人とお話していて、この問題の本質について確認した方がよいと思い始めたので、あらためて「子育て生活応援事業」について書きます。

 

 単刀直入に言うと、「子育て生活応援事業」の議論の本質は、

  この事業で出生数を増やす費用対効果

だったと思います。

 これが本質なので、これをクリアしてから「公平性」とか「マイナンバーカード」とかの話をしたほうがいいと思うんです。

 いかに「公平」であっても「マイナンバーカードの交付率」が上がっても、出生数が増えなかったら30億円以上かける意味が無い。

 市議会の一般質問しか見ていませんが、本質論で市長から説得力のある話は有りましたっけ?

 むしろ答弁からは「現物給付(給食費の無償化)では出生数は増えない」という定説とは正反対の主張もあって、少子化対策の理解度が分かってしまって本当に残念でした。

 

 これは内閣府のホームページにあった円グラフ。解像度が悪くてすみません。下記リンクにオリジナルがあります。

→【リンク】内閣府ホームページ「少子化対策に成功している海外の事例はありますか」

 このグラフについて書いてあるコメントは、

日本では現物給付よりも現金給付の割合が高い特徴がある。そして、現物給付の割合が大きい国は、出生率においても高い傾向がある。

(私のみたところ現物給付率と合計特殊出生率の相関係数はそんなに大きくはないけれど)

 

 他にも例えば、日本の児童手当が出生率に及ぼす効果が小さいというのも研究があり、「児童手当で子どもを1人増加させるコストは年1億円」という言い方もされているくらいです。

 また、「所得の増加は出生率を下げる」という研究も有ります。(「所得増加」→「養育費増加」→「出生率抑制」というBecker理論のパターン。児童手当的なものも所得の増加になるので、現金給付は負の効果を及ぼす場合もあるとのこと。)

 一方で、海外では「現物給付を増やしているし、現物給付の比率が高い国は出生率も高い」という結果が出ています。上の円グラフのようにフランスもスウェーデンも現物普及の割合を増やしてきてこの比率になり、その過程で出生率が高くなったんです。また、高い出生率のアメリカには児童手当すら無い。

 それなのに、敦賀市は現金給付を増やし続ける。「第1子出産応援手当」(2020年から10万)があり、それにまだ今回の「子育て生活応援事業」(ひとり120万円)。そして「給食費を無償化(現物給付)をしても出生数は増えないと思います」という市長の答弁。たぶん印象論だけで「子育て環境日本一」をやっている。

 

 もう一回、本質論から少子化対策を考えましょう

 でないと、本当に取返しがつかなくなります。年間出生数500人を切ってからもう5年も経ってしまったんだから。そして今年は300人台の可能性も出てきています。

 

 時間だけは取り戻せない。早く本質論に戻さなくては。

 

では。

 

【追記①】

 今後、「子育て生活応援事業」に関して市の主張は「感情論」が前面に出てくると思います。極端に言えば、少子化対策とも切り離されて。

 どういうことかというと、

  「この事業はもともと出生数増加を目的としていない。子育て世代を応援したかったのだ」

  「それなのに議会の反対で、子育て世代の応援ができなくなった。」

  「給付をもらえるはずだった人たちをがっかりさせた。」

  「市議会は子育て世代を応援できないのか。」

 もう具体的なデータとかエビデンスとかロジックでは勝負にならないので、「感情論」が出てくるシチュエーションです。

 

 しかし、子育て支援についても本質論から考えてほしいんです。

 今回の「子育て生活応援事業」のように、

  ・一番子育て支出の少ない0~2歳児にだけ、

  ・3年間(2025年まで)+アルファの期間限定でごく一部の人にしか恩恵がなく、

  ・現金同等のポイント付与だから100%子育てに使われるか分からない。

 これが本当に「子育て支援」なのか?

 本質論から真剣に「子育て支援」を考えましょうよ。(少子化対策と分けて考える部分もでてくると思います)

 

【追記②】

 上の内閣府のデータ(円グラフ)。ああいうデータがあることは記憶にあったんですが、論文だったか、何かのホームページだったか、どこに書いてあったかが思い出せなくて・・・と思っていたらブラウザのブックマークに残してあった。ブックマークを整理していたら見つけてラッキーでした。

 ところで、マイナンバーカードのことは前に書いたのですが、お問い合わせもあったので、念のために私の回答を書いておきます。

(お問い合わせ)

「カードの普及によって行政のデジタル化を進めて行政コストを削減できるじゃないか(と書いてあったんやけど、どうなんやろ?)」

(私のお答え)

  →行政コストの削減のために30億円超もかけるの?

  →そこまでやってカードを作ってもらっても交付率は10%くらいしか上がらないのに?

  →親子3人でカード3枚作ったとして、それに120万円?カード1枚40万円?(これは言わなかったけど)

 

 こうやって問い返すと、大体納得していただけます。池田町や坂井市の話もしながら。

 良さそうな話でもちょっと考えると見えてくるものがあります。(「新市庁舎の場所問題」の時と状況が似ていてこんな感じだったことを思い出す。「まちが賑やかになってええやんか」→「○○市はそうなってましたっけ?」→「あ、ほんまやなあ」)

 

 確認で言うと、

  マイナンバーカードの交付率を上げることは重要

  行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)は重要

 でも、「子育て生活応援事業」ができないからマイナンバーカードの交付率が上げられません、とか、「子育て生活応援事業」ができないから行政のDXができません、なんて言ったら他の市町村に笑われます。

 他のやり方で、カード交付率向上もDX化もしっかりやりましょうよ。

 

 繰り返しですが、

「マイナンバーカードが普及して、行政のDXが進み行政改革ができる」ようにするために「子育て生活応援事業」をやるというのは、文字通りの本末転倒ですし、本質ではないんじゃないかな。

 

【追記③】

 最新情報で福井県の人口推計では、8月の敦賀市の出生数は8カ月ぶりに40人を超えて43人でした。1~7月までに3回も20人台が有りましたが、やっと回復基調か?それとも単なる反動が出てきたのか?

 最新データを入れて年換算すると今年(1~12月)の出生数は383人で前年比18.4%減になる予想です。

 参考に福井県全体では7.1%減。

 敦賀市が突出して出生数が減少している状況に変わりはないです。

 

(文章を少し手直しして再アップしました。)

 

 

 

 

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