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「子育て生活応援事業」って(その6、もろもろ雑感)

 今回は「子育て生活応援事業」シリーズの最後です。

 もろもろの雑感をつらつら書いてみます。

 

1.「ハーモニアス」とか「地域間協調」はどこへ行った?

 「子育て生活応援事業」は「敦賀に住んで子どもを産めば120万円貰える」ということで、近隣市町から見たら、非常に地域間競争的な施策だと思います。

 だから、聞いてみたい。

 こういう方向性が敦賀市の「子育て環境日本一」ということなの?

 

 ちょうど7年前の9月議会で、私は市議会で「人口減少対策における自治体間競争」について質問したことが有ります。

 その時の答弁はこちら↓。

「人口減少対策については、我が国全体で取り組まなければならないことでありますから、大局的な見地から見ました場合、議員が御指摘のように地域間競争を助長し、広域的な地域の人口規模は変わらずかえって資源の浪費による地域の衰退を招く、そうした危険性があると認識しているところでございます。・・・長期的な視点においては、敦賀単独ではなく、本市を中心とする広域的地域における一体的な経済圏、生活圏、これを構築するといった地域間競争ではなく、地域間協調、競争ではなく協調というこれを重視した人口減少対策と地域の発展の姿を描くべきであると考えております。
 これが、去る8月31日の議会説明会で申し上げましたハーモニウスポリス構想の基本的な考えとなります。
 ちなみにハーモニウスといいますのは調和とか協調、仲むつまじい、こういった意味でございます。」(2015/9の答弁から)

      ↑↑↑↑

 この素晴らしい理念はどうなった?

 この質問の前後に市役所の人といろいろ雑談しましたが、まさに今回の「子育て生活応援事業」みたいな政策を「地域間競争的な政策」として「こういうの良くないですよね」って話をしてたんですよ(医療費の無償化とかの現物給付系の競争にも否定的だった)。

 なのに、今回の「子育て生活応援事業」は、

「敦賀市の人口さえ増えれば、『地域間競争を助長し、広域的な地域の人口規模は変わらず』状態でもいいんですよ、だって、ふるさと納税があれば『資源の浪費』もカバーされるから敦賀市だけは衰退しないし

というふうに見える。

 ハーモニアスの理念はどうでもよくなったのか?

 結局ハーモニアスも地域間協調とか本気で思ってたわけではないということ?

 こんなだから、ハーモニアスをいくら言っても近隣市町は距離を置いたんじゃないのか?

 7年前のハーモニアスポリス構想の理念の説明から、どうなって、こうなったのか教えてほしい。やさしく聞くから。

 (余談:「ハーモニウス」は議事録のとおりです。念のため。「ハーモニアス」じゃなかったんです。もう最近では、議会の本会議場で一度も「ハーモニアス」という言葉が出てこない定例会が何度か有る。)

 

2.財政は?

  私が市会議員になる前だから8年ほど前、たまたまテレビニュースを見ていたら、敦賀市役所の財政課が取り上げられていました。確か「日本原電敦賀発電所1号機の運転停止が視野に入り、廃炉後の税収が4億円(数字正しいかな?)も減少する」といった内容でした。で、その減少分をどう埋めていくのか、「悩む敦賀市財政課」という内容でした。

 この次の年に出てきた「敦賀市中期財政計画」はどうやって健全な財政を維持するか、悲壮感すら感じられる計画でした。当時は数億円の減収が財政にとって大きいものだったんですね。

 その中期財政計画では「財政健全化の取り組み」で目標金額も示され、歳出削減、行政改革、歳入確保が謳われていました。何といってもこの年だけ表紙のタイトルの色が赤い文字だったのが印象的でした(他の年は全部青文字

 →【リンク】赤いタイトルの中期財政計画(2016/2)

 →【リンク】青いタイトルの中期財政計画(2017/2)

 私は当時、この「赤いタイトルの中期財政計画」の内容には大いに不満だったのだけれど、担当者がすごく一生懸命に調べて、数字を組み立てて、説明もしっかりされて、その真剣さには大いに敬意を感じたものでした。

 しかし、この後、行政改革など「財政健全化の取り組み」は各部署末端には浸透せず、年を追うごとに忘れられていったように思う。各部署に行って目標数字について聞くと、「そんな数字どこに書いてあるんですか」と問い返されたこともありました。

 当時からそういう目標管理のマネジメントは崩壊していたか、そもそもはじめから無かった。行政改革もほぼ機能していなかった。

 「公共施設総合管理計画」も折角つくったのに、計画にはなかったはずの公共施設がいくつも建設されました。

 市長は選挙のときは行財政改革を売り物にしていたのに、むしろ興味がない人のようだった。

 財政改革においても行政改革においてもトップのコミットメントもマネジメントは最初の最初から存在していませんでした。

 財政改革はいつの間にか増える市債の返済計画になり(財政課には同情する)、行政改革も各部署でほとんど意識されず存在しないも同然にみえました。

 

 私は「赤いタイトルの中期財政計画」の全体トーンは好きではなかったですが、行財政改革は必要だと思っていました。担当者が一生懸命、健全化計画を作ったのも感じていました。だから、応援する気持ちも込めて、行財政改革におけるトップのコミットメントとマネジメントの不在を、議会でも何度か指摘しました。

 しかし、のれんに腕押し、ぬかに釘、豆腐にかすがい。何も変わらなかった。

 

 そして、今。確かに望外の金額のふるさと納税が入ってきました。何に使っていいのか分からないほどの金額です。それは分かる。でも、

 

 だからといって、「子育て生活応援事業」、こんなバラマキ的な支出はいいの?

 

 あの「赤いタイトルの中期財政計画」を作った時の気持ちを思い出してほしい。

 「赤いタイトルの中期財政計画」に一番しつこく文句を言っていたであろう私からのお願いです。

 

(余談:ここ数年、あの頃の財政課の問題意識が分かるようになった気がしている。市議になりたての7年前、私は市の財政についてはB/S(貸借対照表)を重視しがちだった。就任直後の市長から「市債はゼロがいい」という謎の答弁が有ったが、実際には市債残高は順調に減少傾向だったし、B/Sは他市に比べて良好だった。なので、ことさら市が歳出削減をいうのは良くないと思っていた。

 しかし、敦賀1号機運転停止で歳入が急に大幅減になった時の短期的なP/L(損益計算書)を考えると、当時の財政課の懸念も今は私なりに理解できる。それでも心配しすぎだったと思うけど。

 そして今現在、短期的に大きな起債のピークを作ってしまった現状をみると、令和10年度以降にもう一度P/L的な心配をしなければいけない時期が来るかもしれない。もしそうなったら、中期財政計画のタイトルは再び赤字でお願いしたい。シグナルとして受け止める。)

 

3.本気の出生数増加作戦を見たい!

 この事業(子育て生活応援事業)に効果が見込める根拠を聞かれて、市は答弁で福井県のアンケート調査を出してきました。

 いや、ちょっと待って。それしかないの? (←それしかなかった)

 福井県全体に比べて、敦賀市は特異的に超急激に出生数が落ちてるんだから、県全体のデータなんか役に立たないでしょ。敦賀市特有の原因がないか調べてないの?

 出生数が500人を切ってから5年も経つのに、そして1.7あった合計特殊出生率が1.50になってから5年も経つのに敦賀市は何をしてた?原因を少しでも調べようとした?そのうえで対策を打とうとした?

 

 それから3年+アルファの時限的な給付ってどういうこと?

 「出生数450人/年が80年続いたら人口は3万6千人。今のように2割の人が出ていくと3万人以下の人口になる」という答弁が有りましたが、今回の政策が効いたとしても4年後はどうなるの?給付をやめても効果は継続して出生数は増えるの?

 今回の「子育て生活応援事業」は3年+アルファの期間限定のカンフル剤です。おそらくカンフル剤を打っているだけでは体質も変わらず、打つのをやめたら元通りです。

 

 とどのつまり、

 本気で出生数を増やす気あるの?

 この5年間をみていて、どうしても本気にみえない。

 

 少し表現がきついですが、少々の怒りを表現したいのでこのままにしておきます。

 

4.議会での説明

 とにかく、ちゃんと根拠とかをもって説明してほしい。いくつか指摘したけど、その場しのぎの根拠レスな答弁が多すぎる。

 印象やイメージ、思い込みしかない説明は信用できない。

 

5.タイミング

 なんでトータル30億円を超える予算が、9月補正予算で出てきて12月から給付?

 

6.政策形成のプロセス、政策決定のプロセスについて

 今回の「子育て生活応援事業」も、たぶん市役所内では、私が指摘したぐらいのことは議論されているはず。事業のスジが悪いことも分かっているはず。

 なのに何故、こういうツッコミどころ満載で、二重・三重・四重にスジの悪い政策が、ポンっとそのまま出てくるのか?

 私も市議会で「新市庁舎の場所問題」の時も含めて何度か言ったことがあるのですが、市の政策形成のプロセス、政策決定のプロセスには、ずーっと違和感を持っています。

 例えば、2017年の6月議会で私の発言。

政策形成プロセスとか政策決定のプロセスというのは、・・・ずっと違和感を感じています。・・・片山副市長も来られて新体制となりましたので、もう一度よく考えていただきたい。このままだと多分同じことを何度も繰り返すような気が私はしています。

 そして、実際に何度も繰り返しました。

保育料据え置き問題(2015)、産業廃棄物廃棄物最終処分場の裁判問題(2017)、新市庁舎の場所問題(2017)、新ムゼウムの建設問題(2019)、子育て世帯応援手当支給(2020)・・・他にもまだまだ有る(ここに書けないこともある)。

 そして「子育て生活応援事業」。

 わたし的には、「子育て生活応援事業」は「新市庁舎の場所問題」(←これもひどかった)くらいツッコミどころ満載。ちゃんと練られている感じ、議論が積み上げられている感じがしないんです。

 政策として全然練られてなくて、思いつきレベルで成立性がないまま、ポンっと出てくる。

 大体、こういう政策はどこからか変な無理がかかっているんです。無理を通すから道理が引っ込む。市役所の中でも、その無理に巻き込まれながら、おかしいと思っている人は絶対にいるはず。

 市会議員時代、こういうたぐいの問題案件や問題事業に接するのは本当に苦痛だった。誰のためにやっているのか分からない事業。市民のためとは思えない事業。

 理屈にならない理屈を作らされる市の職員さん。

 そういう事情が分かっていても、きつく言わなければならない議員の立場。時には好きでもない論破スタイルしかない時もある。

 こういうのって本当に誰のため?

 

 そして今回も。

 何も変わっていない。

 一番の根本的な問題は、これなのだ。

 

 以上で、「子育て生活応援事業」シリーズを終わります。

 この「子育て生活応援事業」については、いろんな方から私の意見を聞かれましたので、シリーズにしてみました。

 急いで上げてきたせいか、読み返すと書き間違いや主語が2つあるとか気になるところは有りますが、数字の間違いや大意が変わるところはないと思いますのでご容赦を。

では。

 

 

 

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