檀上で挨拶をする「彼」を見ていて、昔に戻ったかのような既視感を覚えた。ちょうど30年前、高校の体育館のステージで演説している高校生の「彼」と本当に良い意味で何も変わっていない。
「彼」とは武生高校の三年間、同じクラスで、出席番号順に机を並べると隣の席になることが多かった。
高校の時から人の眼をまっすぐ見て訥々とゆっくり話し、でも冗談やふざけた話ばかりだった。
サッカーでは県内No.1の選手で、実際に高校県大会の決勝のTV中継で解説者が「彼を止めるには二人がかりでないと。県で一番の選手ですから。」というようなことを言っていたことを覚えている。
サッカーに一生懸命で、勉強がどうだったかは覚えていないが、とにかく不思議なくらい人望があった。同級生からも上からも下からも、とにかく慕われていた。当時私は、「彼」の中学時代の校長先生と話す機会があったのだが、「彼」のことを話すときは、「彼」のことがかわいくて仕方がない、といった感じだった。
「将来は政治家になるのかな」と周りの同級生たちは何となく思っていたのだけれど、それが少し確信めいたものに変わったのは、「彼」が生徒会長に立候補した時だった。
それでも、私は半信半疑だった。何せそれまでお互いに真面目な話をした覚えがなかったし、生徒会長とかにも興味があるように私には見えなかった。だから、生徒会長選挙の立会演説もみんなを笑わせて、でも人気があるから楽勝、というパターンだろうな、と勝手に思っていたのである。
立会演説会が始まり、「彼」の番になったとき、「どんな冗談を言うのかな?ちゃんとウケればいいんだけど」と変な心配をしながら、しかし生徒会など興味がなかった私は座ってうつむき体育館の床を見ていた。
ところが、、、
「彼」が話し始めてすぐに私は頭をガツンと殴られた気がして頭を上げ、ステージ上の彼から目が離せなくなった。「彼」は私の予想とは正反対に、それまで見たこともない真剣さで話し始めたのである。
「彼」は訥々と頼りがいのある声で、真剣に学校や生徒会への思いを全校生徒に語りかけていた。高ぶったところや演技めいたオーバーアクションはひとつもなく、でも秘めた熱いものは十分に伝わってきた。
誠実な演説で私は素直に感動した。「彼」は本当に政治家になるだろうな、と思った。
今でもこの時の光景は鮮明に思い出される。
それから30年経った2015年8月23日、南条文化会館の檀上に見る「彼」は、人としての厚みが増し(見た目もかなり厚くなり)、話の内容もとんでもなく重要なものばかりになった。しかし良い意味で本当に何も変わらない。
もともとが誰よりも強い芯を持っていたのだろうか、政治の世界にいて芯の部分が変わらないことは凄いことだと思う。
必要以上に声を張り上げることもなく、大げさな言い回しもしない。訥々とゆっくりと、そして一層頼りがいのある声で、自分の思いを真剣に語りかける。聴いている私も少し背筋を伸ばす。
新たな重責と、多くの人の期待を一身に背負う覚悟を会場の人すべてに感じさせた誠実な挨拶だった。
挨拶のあと、会場にいた多くの人と一緒に、私も心を込めて拍手をした。
仲倉典克福井県議会議長、ご就任おめでとうございます。
ますますのご活躍を心からお祈りいたします。
(8月23日(日)に「仲倉典克氏福井県議会議長就任祝賀会」に出席させていただきました。第97代だそうです。)
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