さて、今回(その2)では、
「子育て生活応援事業」が本当に「出生数を増やすのか」?
を見ていきましょう。今回はちょっと難しい話になってしまいそう。
なので結論を先に書いておきます。
・今回の敦賀市の「子育て生活応援事業」は、マイナポイントを使っているが、これは現金給付の一種である。
・現金給付は出生数の増加の効果は無いか、あっても大きくないと言われている。
・本当は現物支給などで子育て支出の削減を政策化するべき。
ここから話がややこしくなるので、興味のある方と私の説明能力の限界を見たい方は引き続きどうぞ。
さて、9月議会の一般質問1日目の豊田市議が「子育て支援の経済学」という本を紹介されました。この本は私も持っていますが、ほぼ論文みたいな本で「いろんな実証研究の結論」がコンパクトにまとめられています。この本からスタートしましょう。
1.この本に書かれている子育て支援政策の効果
まず、この本から大事なポイントを拾ってみると・・・、
(1)現金給付が子どもの数を増やすとは限らない。
・いろんな事例の中で出生率が上がった例もあるが効果は大きくない。
・効果が無かった事例もある。
・出生率が上がった例でも、早くて1年、長くて3年ほどで効果が無くなっている。(←これは本から拾ったデータを見た私の見解)
(2)現物給付は出生率の向上に効く。
・現物給付とは、例えば「保育所の定員増」とか「保育料への補助」。
・「保育所の定員増」は待機児童が課題の地域の場合は、出生率向上に効く。
・「保育料への補助金」のような「現物支給」は、「より安い費用で子育てができる」ことを意味するので、親はより多くの子どもを持ちたいと考える。(子育ての機会費用が抑えられる)
他の論文でも、出生数や出生率に対しては「現物給付>現金給付」がほぼ定説。
さあ、ここまでを押さえておいて敦賀市の子育て生活応援事業を見てみましょう。
2.敦賀市の事業は本当に出生数の増加に効果があるのか?
本や論文に書いてあるとおりだと思う。
正直、難しい。
政策効果としての出生数の増加を主張できる根拠が、本当に何も無い。世界中、日本中でいろいろやっているけど、市議会での答弁でも成功事例の紹介は無かった。
市議会では、「出生数を増やすというが根拠は?」と問われて、「福井県全体を対象にしたアンケート結果が根拠」と答弁されていたけど、これが根拠になるはずもない。
ましてや前回のブログでも見たように、福井県全体と敦賀市の出生数の状況は全然違います。福井県全体と比べて、敦賀市は出生数が超激減ペースなのに、敦賀市独自の原因分析も無い。
いや、来年の出生数は増加するでしょう。しかし、それは今年に減りすぎた反動の分。政策効果としての出生数の増加を主張できる根拠が本当に何も無い。
次回は、市議会でも議論になった現物支給(保育料や給食費の値下げや無償化)についてです。
では。
(つづく)
【追記】
「子育て支援の経済学」のはしがきには、
「この本では、政府が行う子育て支援、より具体的には育児休業(育休) 制度や保育制度、そして児童手当といった諸制度・諸政策についての経済学研究から得られた知見を紹介する。重視するのは実証研究 、ないしはデータ分析が明らかにする因果関係だ。さまざまな子育て支援策について、「期待されたような効果は本当にあったのか?」「あったとすればどの程度の大きさなのか?」といった点を明らかにしていく。「効果のある政策はより大規模に行い、効果がないことが明らかになった政策は縮小・廃止する」といった姿勢で取り組むことで、長期的には効率性の高い経済・社会を実現することが期待される。子育て支援分野における実証結果に基づく政策形成(EBPM:Evidence-Based Policy Making) に寄与するのが、本書の目的の1つだ。」
と書かれています。
今回の敦賀市の「子育て生活応援事業」は「Evidence-Based」になっているとは思えません。では、何に基づいて政策を決めているのでしょうか???
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